研究テーマ
半導体ナノ構造を人工的に制御する
「ナノ・テクノロジー」が科学技術分野での最近はやりのキーワードとなっています。「ナノ」は「ナノ・メートル」の略であり、「ミリ・メートル」と同じように長さの単位を表します。1
ナノ・メートルは0.000000001メートルですので、大変小さな物を表す単位であることがお分かり頂けると思います。
最近の科学技術の発展は目覚しく、現在私たちは「ナノ・メートル」の単位で物質の構造を制御することが可能です。もっと具体的に言うと、ナノ・メートルの超薄い半導体の膜を自由に積み重ねることが可能なのです。
では「ナノ」の単位で物質の構造を制御することにどのような利点があるのでしょうか。それは「電子を自由に操れる」ことにポイントがあります。
現在私達の生活に電気はなくてはならない物になっていますが、この電気の流れをつかさどるのが「電子」です。電子は目には見えない非常に小さい物質(あるいは波)ですが、そのサイズは「ナノ・メートル」サイズです。そのため、例えば私達がナノ・メートル幅の「壁」を作ることで、電子の動きを封じ込めることが出来るのです。
電子の動きをある程度封じ込めて、特定の方向のみ動くようにしてあげると、余分に使うエネルギーが減ってデバイス性能が向上することが、様々な研究で知られています。専門用語で「量子井戸」と呼ばれるこの構造は、現在半導体レーザーなど様々な形で既に実用化されています。
『「ある程度」などと言わずに、完全に封じ込めてしまえ』、という発想から生まれたのが、量子ドット(点)です。その名の通り、ナノ・メートルサイズの「点」(「箱」と言ったほうが直感的には分かりやすいですね。)の中に電子を完全に閉じ込めてしまおうというのです。こうすることで更にデバイス性能がアップする、ということが計算で示されています。
私が現在研究しているのは、この「量子ドット」です。20年ほど前から研究が始まったこの分野は最近急成長をとげています。