少し具体的な研究内容紹介

 ここからはより具体的な内容として、自分の研究テーマについて説明していきたいと思います。 少しマニアックな部分が多くなっていきますが、寛容な心でお付き合いいただけると幸いです。

 私の研究テーマは最初にも書いてありますが、もう一度言いますと、
  「電流注入T型量子細線を用いた、デバイス特性向上の理論予測の検証及び一次元量子効果の観測」
 であります。そこでまずは電流注入T型量子細線の構造について簡単に説明してみたいと思います。

二つの電流注入スキーム

 現在、電流注入T型量子細線レーザーでは二種類の電流注入スキームが存在しています。
 右に示したのが構造の模式図になります。発光などを調べる場合には特に必要はないのですが、 レーザーとして動作させるためにはT型量子細線の周りに光導波路を作製する必要があります。
 一番色が濃い部分が光クラッド層に対応していて、光クラッドに囲まれた活性層の部分にT型量子細線が形成されています(図では黒い点線の部分に対応しています)。
 
 左側の構造では各ドーピング層が垂直に配置されていることから垂直配置型と呼んでいます。 この注入スキームは1994年に初めて電流注入による発振が観測されたもので、T型量子細線ならではの構造です。 電子と正孔をそれぞれ異なる量子井戸に変調ドープし、その交点にあるT型量子細線へと両キャリアを注入します。
 右側の構造は各ドーピング構造が平行に配置されていることから平行配置型と呼んでいます。 こちらはStem wellに対して対称になるようにドーピング層が配置されていて、Arm wellを通って両キャリアがT型量子細線へと注入されます。


それぞれのデバイス特性

 上記の二つの構造では現在のところ全く異なるデバイス特性が得られています。
 特性のうち重要なものだけをまとめたものが下の表になります。

特性
垂直配置型
平行配置型
動作温度領域
5-110 K
30-70 K
最高動作温度
110 K
70 K
最低しきい値電流
(T型量子細線一本当たり)
0.14 mA (@ 100 K)
0.014 mA (@ 30 K)
最大外部量子効率
0.9 % (@ 100 K)
12 % (@ 30 K)

 ここから垂直配置型は動作温度に関して優れており、平行配置型は閾値電流と外部量子効率に優れていることがわかります。 また、それぞれの最良値は現段階ではT型量子細線における世界記録になっています。
 この平行配置型の最低しきい値電流は理論予測されているものとほぼ一致しており、 理論予測との対応づけが可能な段階までT型量子細線の品質が向上していることがわかります。

現状・・・

 上記のようにデバイス特性から次元性以外の要因がかなり排除され、理論と対応付けられるような純粋な一次元系となってきていることがわかってきました。 そこで、現在はデバイス特性よりももう少し物理的な部分に関する実験を行っています。
 デバイス特性は非常に明瞭な基準ではあるのですが、デバイス全体の結果として出てきたものなので、一次元系においてどのような現象が起こっているかまでは 見ることができません。そこで、利得スペクトルというものを測定し、内部の電子状態に関していろいろと考察を行っています。利得スペクトルはデバイス特性と異なり、 直接内部の情報が得られるのですが、測定が非常に難しいです。最近、測定方法と解析方法を確立しましたので、そろそろ面白い結果が得られるのではないかと期待しています。

 また、デバイス特性に関してもまだまだ改善の余地があると思っており、試料構造を変更したものを作製して、 T型量子細線における世界記録を更新すべく試行錯誤を繰り返しているところで、こちらもやりがいのある研究だと思っています。


さらに具体的な内容については下の修士論文を参照してください(保存をする場合は右クリックで「対象を保存」を選んでください)。

・修士論文(PDF:5.6MB!!) 作成環境:pLaTeX2e on WinShell 2.6

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