研究内容

T型量子細線における
高密度1次元電子正孔系からの
レーザー発振の研究




量子細線とは何か?

なぜ量子細線レーザーなのか?

量子細線レーザーの特徴



  • 微分利得の増大





  • 温度依存性の減少

 半導体量子細線構造はナノスケールで半導体構造を作製することにより電子や正孔を1方向にしか動けないようにした構造です。上の図に示すように構造を小さくし、電子の動きうる方向を少なくしていくに従ってバンド端での状態密度がピークを持った構造になることが分かります。
 これにより、Fermi分布において最も分布確率の高いK=0における状態密度が大きくなり、レーザーの利得スペクトルが大きくなります。これはキャリアが効果的にバンドの底に流れて利得に寄与することを示し、微分利得の増大につながります。また、状態密度が鋭くなることは温度上昇に伴うFermi分布の広がりの影響を抑えることにつながり発振しきい値の温度依存性を減少させることが期待されます。



T型量子細線構造とは?


 T型量子細線構造は、2つの量子井戸の交線部分に形成されます。
 左の図は7nmの厚さの量子井戸の交線部分に量子力学的に閉じ込められている電子の様子をあらわしたものです。
 私たちは水平方向の量子井戸をArm well(腕)、垂直方向の量子井戸をStem well(幹)と呼びます。 
cf. W.Wegscheider et al., Phys. Rev. Lett. 71, 4071 (1993)


どうやって作るか?

 T型量子細線構造は”へき開再成長法”という技術を用いて作製されます。この技術は従来のMBE(分子線エピタキシー)成長技術を用いて、結晶成長した試料をへき開(折る)して垂直に交わる2つの量子井戸を作製するものです。
 左の図に示すようにまずGaAs[001]面方向に量子井戸(Stem well)を作製した後、試料を付け替えMBEチャンバー内の棒で試料をへき開し、直後に[110]面方向に量子井戸(Arm well)を作製します。





詳しくは私の修士論文の発表スライドを参照ください。




課題


 T型量子細線構造レーザーはナノスケールで精度の高い構造を作製する困難さから、これまで低温での動作に限られ、室温で発振するT型量子細線構造レーザーは実現されていません。
 これまでの研究から、レーザー発振に寄与しているのは量子細線中の高密度の電子と正孔であることが示唆されています。そこで、T型量子細線レーザーの発振メカニズムを調べ、温度が高くなるとなぜレーザー発振しなくなるのかをつきとめる必要があります。
 早期の室温T型量子細線レーザーの実現を目指してがんばります。


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